参議院議員時代の山本太郎が主演
山本太郎主演「ビヨンド・ザ・ウェイブス(BEYOND THE WAVES)」というドキュメンタリー映画を知っていますか? 2018年に公開されたこの映画は、一般公開されておらず、今も自主上映会という形で全国各地で企画されています。
監督はベルギー人のアラン・ドゥ・アル―。「福島へようこそ」というドキュメンタリー映画の撮影中に山本太郎と知り合いました。原発反対の発言から芸能界を追放されたことに驚き、この映画を制作することを決めました。
山本太郎の目を通して3.11後の日本を描いているこの映画は、決して山本太郎を応援するための作品ではありません。2013年から2016年にわたって撮影され、永田町で孤独な闘いを続ける参議院議員時代の活動や葛藤が映し出されます。
山本太郎の「静」と「動」
特に興味深かったのが、山本太郎の「静」と「動」のニ面性が捉えられていることです。
当初は単なるパフォーマンスと思われ、党派の仲間からも味方されなかった国会での牛歩戦術や、安全保障関連法案の強行採決の時には喪服でお焼香しながらの投票。議員宿舎前のデモに参加し、スーツ姿で議員バッチを付けたまま拡声器でコール。辺野古の建設現場で警備員と対決する姿もありのまま映画の中に登場します。もしかしたら、マスコミで取り上げられてきた「元・芸能人で変わった行動をする政治家」のイメージそのものかもしれません。
しかし、観客やマスコミを意識する必要のないときの山本太郎は、口数も少なく、福島や沖縄を訪れた折には、現地の風を感じながら、静かなまなざしでたたずんでいます。
孫崎亨氏(国際評論家)との対談では、持論を熱く語ることはなく、ただ同意の言葉を少なく発し傾聴します。プライベートでの交流なのか詳しい説明はありませんが、横川圭希氏・DELI氏(松戸市議会議員)と食事する場面でも、議員としての仕事ぶりを褒められても笑顔で返すのみです。また、山田正彦氏(元農水大臣)の支援者の集まりに招かれているシーンでは、アットホームな雰囲気に合わせてサービス精神を発揮、参加者を盛り上げつつも主役を立てることを忘れません。
れいわ新選組を立ち上げる以前から山本太郎を応援してきた方にはよく知られている姿かもしれませんが、私はこの映画で山本太郎の「静」の部分に触れることができました。もちろん、「静」の中にもあるこの国に対する強い決意が、ラストの言葉に表れています。
アラン監督が切り取る静かに淡々と流れる映像、その中でも、フレコンバッグが道路脇に山積みになっている福島で車を走らせる場面や、原発事故で無人となった町が映し出されるカットは、この国に生きるすべての人々に観てもらいたいシーンです。
「ビヨンド・ザ・ウェイブス」自主上映について
この映画は、ボランティアによって運営されている「ビヨンド・ザ・ウェイブス自主上映連絡会」が1年以上の活動を通じて全国から主催者を募り、公開されてきました。現在は新規の上映会募集をいったん打ち切っています。もしお近くで公開が予定されていたら、ぜひ足を運んでみてください。
「ビヨンド・ザ・ウェイブス (BEYOND THE WAVES) 」
監督:アラン・ドゥ・アルー
製作:Sophimages
言語:日本語(英語字幕)
2018年/ベルギー/カラー/65分
▼上映情報はこちらから
ビヨンド・ザ・ウェイブス自主上映連絡会
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(text by MOMO)